
ねえ博士、チーターって世界一速いって聞いたけど、どのくらい速いの?しかも、ずーっと走れるわけじゃないってほんと?

いいところに気がつきましたね。
実はチーター、地上で最も速く走れる動物ですが——
その全力疾走は、なんとたったの20〜30秒しか続かないんです。

ええっ!? あんなに速いのに、それしか走れないの?

そうなんです。
チーターは、進化の中で“とにかく速く走る力”を手に入れるかわりに、
“長く走る力”を手放した動物なんですよ。
つまり、「スピード特化型」ってわけです。
この記事では、その“速さのヒミツ”と“速さの代償”について、くわしく見ていきましょう。
チーターのスピードはどれくらい? スポーツカーと勝負できる!?
チーターは、地上で最も速く走れる動物です。
その最高速度は、なんと 時速95〜114km にもなることが知られています。これは、条件が良ければの話ですが、車に負けないほどのスピードです。

えっ、それってもう車と同じくらいじゃないの!?

はい、スポーツカーに匹敵する速さです。しかも、ゼロから時速100kmに達するまでにかかる時間は、たったの3秒ほど。
まさに“地上のスプリンター”ですね。
この加速力は、ほかのどんな動物もかないません。
けれど、チーターのすごさには「ある条件」がつきものです。
それは、この速さを維持できるのが、ほんのわずかな時間しかないということ。

へえ〜…じゃあ、どれくらい走れるの?

全力で走れるのは、20〜30秒ほど。
距離にすると、だいたい400〜500メートルが限界です。だから、長く走り続けるのはとても苦手なんですよ。
このように、チーターの走りは「短距離に特化したスピード型」。
トップスピードに乗った瞬間は無敵ですが、あっという間に息が上がり、体温も急上昇してしまいます。

まさに100メートル走の選手みたいな感じだね!

そのとおりです。すぐに決着をつけないといけない、一発勝負のスプリント型なんですよ。
どんなに速くても、20〜30秒しか走れないチーター。
実はその理由は、体のつくりにあります。
速さの代償とは? チーターの体に隠されたひみつ
チーターは「速く走ること」に特化して進化してきたため、「長く走ること」はあまり得意ではないのです。

へえ、体のつくりが関係してるんだ? どんなふうに違うの?

では、チーターの“スピード特化ボディ”について見てみましょう。
しなやかな背骨でスピードアップ
チーターの背骨はバネのようにしなる構造になっており、一歩ごとの歩幅(ストライド)がとても大きくなります。
このおかげでスピードが出ますが、長時間この動きを続けると体に大きな負担がかかってしまいます。
筋肉も「ダッシュ型」
チーターの筋肉には、瞬間的に力を出す「速筋(そっきん)」が多く、長く動き続ける「遅筋(ちきん)」は少なめです。
だから、短距離は得意でも、長距離には向いていないのです。

たしかに、筋肉の種類って聞いたことあるかも!
心臓と肺も「瞬発型」
全力で走ると、酸素やエネルギーを一気に使い、筋肉には「乳酸(にゅうさん)」という疲労物質がたまりやすくなります。
さらに体温も急激に上がるため、長時間のダッシュは体にとって非常にリスクが高いのです。
スプリント専用の「爪」と「しっぽ」
チーターの爪は半分しか引っ込めることができず、スパイクのように地面をつかみます。
また、長いしっぽはカーブのときにバランスを取る「舵(かじ)」のような役割を持っています。
どちらも短時間の加速と方向転換に特化した装備です。

なるほど……“短時間で仕留める”ための体なんだね。

そのとおりです。速さを極めたかわりに、長く走る力を手放した…これがチーターの進化のトレードオフ(速さの代償)なんです。
たとえば、チーターは速く走る体を手に入れたかわりに、持久力を失いました。
他の例では、カメのように硬い甲羅を持つ代わりに、動きがゆっくりになった動物もいます。
このように、すべてを手に入れることはできないため、「何を選び、何を捨てるか」が生き残りの戦略になるんです。
では、そんなチーターは野生でどうやって獲物をしとめているのでしょう?
どうやって狩るの? チーターの野生での作戦
全力で走れるのはわずか20〜30秒。その短い時間で獲物をしとめなければならない—— そんな厳しい条件の中、チーターはどんなふうに狩りをしているのでしょうか?

そんなにすぐバテちゃうのに、ちゃんと獲物をつかまえられるの?

良いところに気がつきましたね。だからこそ、チーターは“知恵”と“タイミング”で勝負するんです。
できるだけ近づいてからダッシュ!
チーターは、むやみに追いかけることはしません。 草むらや地形をうまく利用しながら、そっと獲物に近づきます。 そして「これならいける!」という距離まで来たとき、一気に全力疾走を始めます。
狩りの成功率は意外と高い?
チーターの狩りの成功率は、およそ40〜50%といわれています。 これはライオンやハイエナよりも高め。 ただし失敗すれば体力を消耗して、すぐに再チャレンジすることはできません。

へえ! 半分くらいは成功するんだね。でも失敗したら大変そう…。
一度走ったら、しばらく動けない
全力で走ると、体には大きな負担がかかります。 狩りに失敗したチーターは、回復するまで30分以上も休まなければならないこともあります。
せっかく獲っても、奪われることも…
チーターは体がスリムでケンカには向いていません。 そのため、ライオンやハイエナに獲物を奪われてしまうこともあります。 せっかく命がけでしとめたのに、食べられないなんてこともあるのです。

うわぁ…チーターって、速いけど大変な生き方なんだね…

ええ。でもだからこそ、あの“究極のスピード”が必要だったんです。命をかけて、わずか数十秒にすべてをかける。それがチーターの戦い方なのです。
まとめ:チーターの“速さの代償”とは?
チーターは「地上最速」の名にふさわしいスピードを持っていますが、実はその速さには大きな代償があることがわかりました。
速いけれど、長くは走れない
全身が「短距離ダッシュ」に特化しているため、全力で走れるのはたったの20〜30秒。 長時間の追跡や持久戦には向いていません。
狩りは“1回勝負”の真剣勝負
全力疾走のあとは長い休憩が必要で、失敗すればすぐには再挑戦できません。 さらに、せっかく獲物をしとめても、他の動物に横取りされることもあります。
それでもチーターは生きている
進化のなかで「速さ」にすべてをかけたチーター。 その姿は、美しく、そして少し切ないものでもあります。

チーターって、ただ速いだけじゃなかったんだね。いろんな苦労があるんだ…。

その通りです。速さの裏には、生きるための“選択”があるのです。だからこそ、私たちが見るあの走りには、感動があるのでしょうね。